オーストラリアと中国経済

豪ドル相場は、中国経済に「連動」ともいえる影響を受けます。

中国経済の悪化が報じられ上海株式市場で株価が暴落……といった局面では、同時に「豪ドルが急落」といったニュースが流れることが多いですね。

中国経済と豪ドル相場(オーストラリアの経済・金融状況)には、どんな関係があるのか、見てましょう。

中国への輸出がオーストラリア経済を支える

2017年のオーストラリアの輸出総額は、約4000億豪ドルでした。輸出先を国別に見るとトップは中国で、約31%になります。

つまり、オーストラリアから中国への輸出総額は1200億豪ドル以上に達したわけですね。オーストラリアのGDPは約1兆8000億豪ドルですから、中国への輸出はその7%程度を占めることになります。

おもな輸出品は鉄鉱石や石炭などの鉱物資源で、オーストラリアの資源が中国の圧倒的な鉄鋼生産能力を支えている構造が読み取れます。

中国への輸出が輸出総額の1/3近くを占めるわけですから、その動向が貿易収支(実需の豪ドル需要=為替相場)に与える影響の大きさも容易に想像できるでしょう。中国経済の動向で左右される「中国への輸出額」が、豪ドル相場にも影響を与えるわけです。

また、オーストラリアは「資源国」のイメージが強いため「中国経済の後退で資源価格低迷」という流れが出てくると、豪ドルの連想売りを誘う面もあります。

資源価格とオーストラリアの実体経済

もっとも、オーストラリア経済全体で見るとGDPに占める鉱業生産額の割合は極端に高いとまでは言えず、資源価格を材料とする豪ドルの変動はややイメージ先行というか過剰反応にも見えます。

オーストラリア経済の中心は、他の先進諸国同様にサービス業です。その意味では、「オーストラリアは資源国(天然資源の輸出で国が成り立つ資源立国)」という認識自体が、オーストラリアの実体経済と乖離した誤解と言えるかもしれません。

近年は移民の増加で住宅需要が増えたことから、資源よりも不動産市況が経済を支えてきた面もありますしね。

資源価格の動向がオーストラリア経済にある程度の影響を与えるのは事実ですが、その影響は決定的とは言えない。豪ドル取引においては、その点を忘れないようにしたいものです。

実際、リーマンショック後に資源価格が低迷していた時期にもオーストラリア経済は好調で世界最長の景気拡大を実現していました。

中国経済や資源価格を材料に豪ドル相場が「過剰反応」を見せた時は、長期のポジションを持つチャンスになるかもしれません。