オーストラリアの貿易赤字

豪ドルの発行国オーストラリアといえば、何を思い浮かべるでしょうか?
有名な観光立国であり、内陸の砂漠地帯には多様な自然や伝統文化も息づくオーストラリア。ただ、「経済」に興味を持つ人がまず思い浮かべるのは「鉄鉱石と石炭」でしょう。

実際、オーストラリアは日本や中国など世界に鉱物資源を輸出する世界でも有数の「資源大国」です。オーストラリアの貿易状況を見ると、輸出品目の上位には石炭や鉄鉱石、金などの鉱物資源が並んでいます。

最近の資源高、さらに食料生産力も高いオーストラリアのこと、さぞ貿易で稼いでいる(貿易黒字を積み上げている)だろう……と思ってオーストラリアの貿易収支をよく見ると、慢性的な「貿易赤字」国なんですね。

資源国ですが、原油の生産が少ないため多くを輸入に頼り、輸入品目で最大の項目が「原油」。資源全体の輸出入で見れば輸出超過な感じですから、「資源高」自体は貿易収支の改善要因と思われますが、原油高には注意が必要でしょう。
豪ドルベースで見た原油の輸入額は、原油価格の下落や為替動向(豪ドル高)、経済低迷で低下しています。ただ、これから経済が拡大局面を迎え原油価格が高騰すれば、輸入額も膨らみそうです。

もっとも、貿易赤字の額自体は2009年で60億オーストラリアドル程度。GDPが約1兆3000億オーストラリアドルなので、GDPに対する比率はそれほど大きくはありません。貿易赤字そのものの豪ドル相場へのマイナス効果は、限定的でしょう。

オーストラリアの貿易相手としては、日本や中国を中心とするアジア圏が大きな部分を占めています。特に、最近は中国の存在感が増しているようですね。今後、中国への輸出が拡大すれば、赤字傾向の貿易収支が黒字基調に転換する可能性も十分にあるのではないでしょうか。