ユーロ危機とオーストラリア経済、豪ドル

2010年に続いて2011年もユーロ危機の年となりました。数年前には考えられなかった「ユーロ崩壊」の可能性すら議論され、「先進国」が事実上のデフォルトに陥る異常事態。

既に貿易や投資などの面で世界中がユーロ下落の影響を受けていますが、オーストラリア経済、豪ドル相場への影響はどれほどのものになるのでしょうか。ジェトロのオーストラリア関連資料を参考に見てみることにしましょう。

まず、貿易面で見てみます。実は、オーストラリアとユーロ圏の貿易はそれほど大きくありません。オーストラリアの貿易相手は、主に中国や日本をはじめとするアジア・太平洋地域の国々で、ユーロ圏との貿易はほとんど目立たないのです。
あえて言えばドイツからの輸入が少しあるので、ドイツの製品を輸入している業者にとっては利益を拡大するチャンスといえるかもしれませんね。

次にオーストラリアとEUの直接投資を見てましょう。

EUは、オーストラリアから見ると最大の直接投資先になっています。ただ、2010年には大幅に投資額が減っているので、2011年がどうなっているか、興味深いところですね。2010年のEU圏に対するオーストラリアからの直接投資額は、約1000億豪ドル。日本円にして、8兆円程度です。

ユーロ安によって、この直接投資が(豪ドル換算で)かなり目減りしていることになるのでしょう。

一方、EU圏からのオーストラリアに対する直接投資は、約1300億豪ドル(ただし一番多いのはイギリス)。2010年には既に減少(投資の引き上げ)に転じているので、2011年にはさらに減っているのでしょうか。2010年末の時点では、EUが最大の直接投資国でしたが、既にアメリカに抜かれている可能性もあります。

ただ、直接投資をネット(差し引き)で見ると、ほとんど相殺されそうですから、投資の価値全体としてはユーロ安の影響はあまりないかもしれません。双方の投資規模が減少傾向にある(相手に対する投資を減らしさらには引き上げている)のが気になる点ではありますが。

以上、貿易と投資という観点で、ユーロ危機(為替相場におけるユーロ安)がオーストラリア経済にもたらす影響を見てみましたが、直接的な影響は意外に小さそうです。

もちろん、ユーロが揺らいで世界経済全体が冷え込めば、オーストラリアも影響を免れません。特に、最大の貿易相手国である中国経済が縮小するようなことになれば、影響も大きいでしょう。その意味では、「ユーロ危機による中国経済への影響」にも注意が必要といえるかもしれません。