アメリカQE(量的緩和政策)の出口と豪ドル相場

アメリカFRBのQE(量的緩和政策)の「出口」と金利政策(低金利からの正常化)を巡って、世界の金融市場が神経質な値動きを見せています。

アメリカの経済指標から「FRBのQE終了と利上げ時期」を読み取ろうと一喜一憂し、ちょっとした指標の変動で為替相場や株式市場が大きく揺れる状況が続いているのです。

アメリカの金融政策は「米ドルの流通方針」を決めるものですから、米ドル相場に決定的な影響を与えます。ただ、豪ドルなど米ドル以外の通貨がより大きな影響を受ける(アメリカの金融政策の変更で、米ドルを上回る変動率を見せる)こともあるんですよね。

アメリカの金融政策と豪ドル相場には、どんな関係があるのでしょうか。

FRBによるQEの出口戦略と世界経済

経済指標が改善すると、QEの縮小が「テーマ」となり株や債券が下がる(金利が上昇)し、為替市場では米ドルが独歩高になる。そして、アメリカの雇用統計が振るわないと、QE縮小/利上げの延期期待からダウ平均が上昇する……典型的な金融(というより政策)相場だったのです。

アメリカの金融政策を決めるFRBはすでにQE(大規模な量的金融緩和)の出口を模索し始め、資産の買取による直接的な資金注入政策を縮小しています。さらに事実上のゼロ金利からの「出口」も模索している段階で、FRBによる利上げがいつになるのか、が世界経済の動向を決める焦点になっているのです。

アメリカのQE終了と利上げによる豪ドル相場への影響

では、アメリカのQE縮小(世界中にばら撒かれてきた米ドルの巻き戻し)と利上げは、豪ドル相場にどのような影響を与えるのでしょうか? それを考えるために、まずQE縮小が「現実」のものとして意識されてきた2013年春頃からの為替相場を振り返ってみましょう。

2013年春から夏にかけての豪ドルチャートを見ると、典型的な「下落」相場になっています。5月には、世界的な株安、新興国通貨の下落が進みましたが、そのタイミングで豪ドルの下げも加速し、オーストラリアの金融当局が利下げに踏み切ると、その流れが「確定」した感がありましたね。

そもそも資源大国にして高金利政策を取ってきたオーストラリアの通貨、豪ドルが「買われる」というのは、どういうことでしょうか? 豪ドルを購入する人は何を「期待」して買うのでしょうか?

世界的に好景気であれば、まずは「資源国通貨に対する投資」でしょう。そして、株高・金利上昇基調であれば、他国より高金利で運用できるという金利面の利点ですね。世界中の投資家がその豪ドルを買う「原資」となるのが、アメリカ(FRB)が供給する「米ドル」というわけです。

つまり、世界中に「投資資金」があふれている状況で、豪ドルは高金利と資源高への期待で買われています。ということは、その「期待」がしぼんでいく過程では売られるわけです。

QE縮小とは、まさにこの「投資の原資」の供給を減らすこと、そしてアメリカの債券の価格を買い支える政策からの脱却(つまり実質金利の引き上げ)です。まず世界的に投資資金が引き上げられることで、豪ドル高を支える期待と原資が縮小します。さらに、金融緩和の出口が見えてくることでアメリカの金利に対する上昇期待が高まり、豪ドルの「高金利通貨」としての優位もなくなってくる。

これでは、「QEによる米ドル大量供給の終焉」「FRBの利上げ姿勢」が見えてくると豪ドルが「売られる」のも当然ですね。

もっとも、オーストラリアはそれなりの経済規模を持つ先進国です。QE縮小とアメリカの利上げに伴う下落が進んでも、どこかで「落ち着く」でしょう。その時には、金利差は縮小したとはいえまだアメリカよりも高い金利、そしてオーストラリアという国自体への「投資」妙味といった「豪ドルの魅力」が見えてくるはず。