オーストラリアの財政

最近の為替市場のテーマといえば「財政」でしょう。巨額の財政赤字を抱え、格付けが引き下げられた国の通貨が為替市場で容赦なく売り叩かれて暴落する。そんな場面が目立つようになってきました。
特にユーロの惨状は目を覆うばかりで、ドイツなど自国の財政の健全性を堅持しながらも「運命共同体」として巻き込まれた国の中にはユーロ脱退論まで出てきているとか。

ただ、オーストラリアの豪ドルに関しては、そうした「財政不安による通貨暴落」は当面なさそう。とにかく「国債の発行」が少ないのです。2002年には、オーストラリアが国債を完済し国債市場の廃止を検討している、というニュースが流れたりしましたね。

その後は世界的な経済混乱もあって少し財政赤字が膨らんだこともあり、2010年6月現在の国債残高は423億豪ドルとか。GDPの3%程度です。年間の赤字ではなく、国債の残高(政府の累積債務)がGDPの3%……日本から見れば夢のような話ですね。

ただ、国債というのは国が使えるお金、特に将来の基盤整備のために先行投資の資金を調達する手段としてはきわめて有効なツールとも言えるでしょう。また、国内外の投資家にとっても、国債という「国の借金制度」があるおかげで公共的な事業へ投資し安定した利回りと国債で行う事業の効果を享受することができるわけです。
財政の健全性を損なわない範囲、経済規模で十分に返済が可能な範囲であれば、むしろ積極的に国債を発行し「国の役割」を果たすべき、という声も根強い。

いずれにしろ、オーストラリアの健全な財政状況は、将来の国債発行も含め「取りうる手段」が多いことを意味します。長期国債の利回り(国債価格)は、長期金利の指標にもなり豪ドル相場に大きな影響を与えますから、財政の動向にも注意が必要ですね。