新型コロナウイルス危機が開くベーシックインカムへの道

新型コロナウイルス感染拡大を防ぐ取り組みとして求められている「外出自粛」。テレワークなどの取り組みも進められているものの「仕事ができない」「事業が行き詰まる」ことで生活破綻の危機に瀕する人も、多数いることでしょう。

新型コロナ対策でベーシックインカム

そうした状況下国民の生活を守るために各国で行われているのが、「現金給付」です。仕事を失ったなど「新型コロナウイルスの直接的な被害」を受けた人だけでなく幅広く給付する国も多く、今後いわゆるベーシックインカムなどの新しい社会保障につながる可能性も出てきました。

「国が国民に広く現金を給付する」ベーシックインカムは、実現不可能な夢物語とみなす傾向も強かったわけですが(特に日本)、新型コロナウイルス対策という思わぬきっかけで限定的な形ながら「実現」してしまったともいえるわけです。

先月以降日本でも本格化した給付対象を限定するか否かの議論では「高所得者に給付しても税金で事実上返納するのだから問題ない」という声がかなり聞かれたのも、意外でした。

もちろん今回も、古い政治家や自称「言論」人の中には、金持ちには金を配る必要はない、といった主張をする人も珍しくありません。これまでの流れであれば、こうした一見「格差に配慮」するかに見せかけながら対立構造を煽る暴論で「一律」給付も消えていた可能性が高かったのではないでしょうか。

しかし、今回は新型コロナウイルスで壊滅的な打撃を受ける企業が目立つ危機的状況だけに「まずは一律に給付しよう」という声が上回り、さらにある種の連帯意識が高まったおかげで金持ちは税金を払うのだから給付を受けてもよい、とする良識が勝ったということだと思います。

問題は、新型コロナウイルスの感染が収まり経済の再建が進む中で給付システムがどうなるか、ですね。パンデミックそのものが終息しても失業や流通・産業構造の変化により困難な状況に置かれる人が多数取り残される可能性が高そうですから、長期的にかなり大規模な支援策が必要になるでしょう。

支援対象者の規模によっては、新型コロナウイルス危機の後も「一律」型の給付、少なくとも最低所得補償のような仕組みを導入する国が増えるのではないか、という気がします。

ロボット/AIの急速な普及と格差拡大という激動の時代に突如世界を襲った「100年に一度の危機」。危機をきっかけにSFや夢物語でしかなかったベーシックインカムという「大変革」がもたらされるのかもしれません。