クロス円は米ドルとの合成関数で考える

円/豪ドルなど米ドル以外の通貨と円の為替相場は、「クロス円」と呼ばれています。

為替市場では、円買い/円売りを行うクロス円取引はそれほど活発に行われているわけではないので、市場規模は米ドルを介した取引に比べ小さいのが特徴です。

FXトレーダーから見れば、値動きが比較的大きくなりやすい点が魅力(かつリスク)ですね。米ドルより金利(スワップ)水準が高い通貨も多い。ただ、スプレッドが広い(為替手数料が高い)のが難点でしょうか。

クロス円は米ドル/円をかける合成関数

このクロス円ですが、「直接取引」の市場は小さくても平時の流動性については特に問題ありません。なぜなら、為替市場では「米ドルとの取引」が可能だからです。

クロス円も、「米ドルを通して」考えることができるわけですね。円で豪ドルを買うなら、まず円で米ドルを買ってその米ドルで豪ドルを買う、というわけです。この場合、円と豪ドルの相場は「円と米ドルの相場×米ドルと豪ドルの相場」という合成関数で動くことになります。

FXなどの外国為替取引でクロス円のスプレッド(為替手数料)が米ドルに比べ大きいのも、直接交換できる市場が小さくカバー取引がしにくいという背景があります。

通貨の評価は米ドル基準も考慮する

ただし、FXに限らず為替市場では米ドルが中心的存在になっているのでクロス円相場の値動きを見るときは、「対円で見た円高/円安」という視点にとらわれるとその通貨の傾向を見失うことがあります。

たとえば豪ドルが円に対して値上がりしているから「豪ドル高」でこれからも上がるだろう、というのは早計で、真の意味(世界の為替市場における評価)で「豪ドル高」かどうかは「米ドルに対する値動き」を確認してみないと判断できないのです。

米ドルに対して豪ドルが下がっていても、円がそれを上回るペースで下げていれば「円で見た豪ドル相場」は上昇します。豪ドルのクロス円相場は、円安/豪ドル高になるわけです。

でも、それは豪ドル高というより「円安」とみるべきですよね。そうなると、投資対象として豪ドルが本当に魅力的なのか、再考の余地が出てくるでしょう。「評価が下がっている」豪ドルよりも、米ドルやもっと「勢い」のある通貨の方がよいのではないか、と。

また、為替市場においては「切りの良い数字」が心理的な節目になるだけでなくオプション絡みの「抵抗線」になることも多いのですが、クロス円で「切りの良い数字」を考えるときにも注意が必要です。

そう、「取引の少ないクロス円相場」で考えてもあまり意味がない可能性があるのです。「豪ドル80円」は、日本円で豪ドルを取引する日本のFXトレーダーにとっては「心理的な節目」になり得ますが、米ドルを通して他通貨を見る「世界の大多数」の為替トレーダーにとっては、意味がないかもしれません。大多数の市場参加者にとって無意味な節目に、相場の「抵抗線」「サポート」を期待することはできないでしょう。