2017年夏、北朝鮮の弾道ミサイル開発が進展したことで「北朝鮮(朝鮮半島)危機」が高まりました。 米朝双方が大規模軍事演習や爆撃機の示威飛行、弾道ミサイル発射実験・核実験などの軍事的挑発行為を繰り返し、リスクオフを背景とする急激な円高が進みました。しかし、その後リスクオフの雰囲気は長続きせず急速な巻き戻し(「北朝鮮リスク後退」による円安)もあったことから、急変する為替相場に振り回されたFXトレーダーも多かったことでしょう。 北朝鮮リスクと為替相場実際、北朝鮮の弾道ミサイル発射や核実験で「北朝鮮リスクの高まり」が意識された時、為替とくに円と米ドルはどのような値動きだったのでしょうか。 為替市場の値動きから見て北朝鮮リスクが「最高潮」に達したのは、9/8-11の週末だったといえるでしょう。8日は円高が進み特に夜に入ると値動きが加速したので、眠れぬ夜を過ごしたFXトレーダーも少なくなかったと思います。 ニュースでは米朝双方の攻撃的言動が取り上げられ、アメリカによる北朝鮮攻撃は具体的にどのような形で進むか解説する「軍事評論家」が引っ張りだこでしたね。 チャートを見てもこの日は日中からずるずる円高が進み、夜に入ると値動きが拡大します。週末の夜ということで、格好の「マネーゲームのネタ」に食いつくFXトレーダーが多数参戦したこともあるのでしょうか。 しかし、為替市場の「リスクオフ」ムードはこの夜が「極み」で、週が明けると急速に円安方向に巻き戻されていきます。 月曜日、火曜日とそれぞれ1円程度円安に振れ金曜日あたりからは「直近の危機前を上回り、一連の危機前とほぼ同じ円安水準」で膠着状態に入ったのです。 終わってみれば、2017年7月後半から9月中ばにかけての「行って来い」相場(起点と終点はともに1ドル111円台後半)になったわけですね。結局は元に戻ったわけですが、円高のピークは1ドル107円台。しかもチャート上の値動きもそれなりに大きかったので、「リスクオフとリスクオンの波」に乗れたFXトレーダーは大儲けできたはずです。 9月15日には北朝鮮が過去最高の飛距離で弾道ミサイル発射実験を行い、瞬間的に円高に触れますが、すぐさま巻き戻されました。この時点で北朝鮮リスクが「相場のテーマ」ではなくなった、と判断できるでしょう。 地政学的リスクからの巻き戻し相場の特徴北朝鮮に限らず基本的に「地政学的なリスク」による相場急変は、一時的なものです。しかも、「リスク後退」が意識されると急激に巻き戻されます。 問題は、そのリスクが「構造的な転換」を直ちにもたらすものか、という点でしょう。投機戦術としては今回の北朝鮮のように「市場の雰囲気」はリスクオフでも本質的な構造転換とは言えない場合は、リスクからの「戻り」を取る戦術の方が効率が良い場面も多いのです。 特に為替のように本質的にゼロサムゲームで相場参加者のポジションが偏るといつか巻き戻しが起こらざる得ない相場では、常にポジションの偏りとその「戻り(反対売買によるポジション解消)」を意識する必要があります。 もちろん、本当に戦争に突入して北朝鮮の政権が崩壊する局面になれば、為替市場でも相場(各通貨の潜在的価値)そのものが変わることでしょう。朝鮮半島が韓国主導で統一されアメリカの勢力圏になれば米ドルが上がるでしょうし、統一によって韓国の「アメリカ離れ(中国接近)」が強まれば下がるかもしれません。 しかし、米朝が挑発合戦に終始している間は、短期的な変動があっても通貨そのものの価値変動は極めて限定的と見るともできます。 リスクオフ相場に突入したら、まずリスクが「本物」かどうか考えてみましょう。本物でない、と判断したのならリスクオフ相場には深入りせず「戻った時の水準」を考えながら「リスク後退」時の取引戦術を考えたいところですね。 |