リスクオフと避難通貨

為替や株式の市況ニュースでよく出てくるキーワードが、「リスクオフ」「リスクオン」です。

リスクオフ/リスクオンとは、投資家(特に多額の資金を動かす機関投資家やヘッジファンド)のリスクに対する選好度です。市場の雰囲気(ムード)がリスクオフに傾いているなら、投資家はリスクを避け「安全資産」に資金を移し、リスクオンならリスクを積極的にとって投資(投機)収益を狙います。

リスクオフで買われる避難通貨

為替の世界では、リスクオフになると為替市場で「安全」と評価されている「避難通貨」が買われます。避難通貨は、流動性があって値下がりリスクの小さな「堅い」通貨です。

リスクオフの局面では、「高収益だけど価値が不安定」な資産が売り込まれて暴落します。ただ、金融取引は資産の「交換」ですから、ある資産が売り込まれればその資産と交換される、つまり「買われる」資産も出てくるわけです。

そうした「資産の交換」が普段より極端な形で行われる状況が、リスクオフ(あるいはリスクオン)と言えるでしょう。

世界的に金融資産の価格(評価基準)が大きく変動するリスクオフの局面では、価格が低下するリスクの大きな資産を「下げにくい」資産と交換して確保する流れが強まります。その下げにくい金融資産の筆頭が、「避難通貨(を発行する国の国債)」というわけです。

何が避難通貨になるかは、その時の各通貨の背景によりますが、20世紀末頃までは米ドル、そして今世紀に入ってからは円が選ばれる傾向にあります。「有事のドル買い」「有事の円買い」と言われる現象ですね。

リスクオンで買われる高金利通貨/新興国通貨

逆に、リスク選好の雰囲気が高まるリスクオンの局面では「不安定だけど高い収益が期待できる」リスク資産の価格が上昇します。リスクがあっても「これから良くなる/収益を上げられる」期待を持たせてくれる資産を買いたい、という人が増えるわけです。

通貨で言えば、高い金利収益が期待できる高金利通貨、あるいは経済成長に期待できる新興国通貨がリスク資産になります。新興国通貨はいわゆる先進国に比べ高金利ですから、同時に高金利通貨であることも多いのが特徴ですね。

特にFXのような証拠金取引で「ある通貨を借りて他の通貨を買う」場合は、金利差が収益(FXならスワップポイント)になるため「低金利の通貨が売られて高金利の通貨が買われる」傾向が強くなります。

リスクオフ/リスクオンを見極める

FX取引でも、市場がリスクオンにあるのかリスクオフになるのか、見極めることは非常に重要です。

リスクオンにあるのなら、豪ドルやランド、レアル、トルコリラなど「高金利/新興国通貨」が買い進まれやすくなります。株式市場の値動きなども見ながら、ポジションを取りたいところでしょう。

世界経済が好調で長期間リスクオンモードが続くと、世界的に資源高となり金利も先高感が強まるので、特に資源国の高金利通貨に注目したいところです。

突発的な「事件」や株式市場の暴落などで市場の雰囲気がリスクオフに傾いてきたら、今どの通貨が「欠点」が少ないか、「よりまし」と評価されているか、検討してみましょう。何をきっかけにリスクオフが始まったか、という点も考慮すると良いかもしれません。債務問題がテーマになっているのなら、財政が健全な通貨、紛争がテーマなら「紛争地やアメリカとの距離」でしょうか。

最近は日本円が実質金利の低さや黒字基調の経常収支、そして世界に持つ債権の多さを背景に避難通貨としての地位を確保してきました。円は景気が良くなる(リスクオンに入る)と売られる不思議な通貨ですが、その背景には避難通貨としての地位があるわけですね。

ただ、今後ユーロ圏の財政問題が落ち着いてきたら、ユーロも避難通貨の一角として見直されてくるかもしれません。