オプション取引

オプション取引の仕組み

オプション取引とは、権利行使日(または特定の期間内)に特定の指数や商品(原資産)を権利行使価格で売買する「権利」を売買する取引。原資産を権利行使価格で買うオプションは「コール」オプション、権利行使価格で売るオプションは「プット」オプションと呼ばれる。

オプションは市場で売買され、証券会社などを通してオプションの売買を行うことができる。オプションを購入すれば権利行使が可能な買い方(債権者)に、オプションを売れば権利行使に応じる義務を負う売り方(債務者)になることができる。

ただし、通常のオプション取引における権利行使は、権利行使価格と原資産の市場価格の差額を金銭で清算する差金決済となる。実際に原資産のやり取りが行われることはない。

実質的にオプション取引を含む金融デリバティブ商品も、多数販売されている。

オプション取引の利益と損失

たとえば、「権利行使日に日経平均株価指数を20000円で買う権利」なら、「日経平均株価指数を原資産とする20000円のコールオプション」となる。権利行使日に日経平均株価が20000円を上回っている(オプションの清算で金銭を受け取れるイン・ザ・マネー状態)と、このコールオプションの買い方は権利を行使することで20000円を超える差額に相当する金銭を受け取ることができるわけである。

仮に権利行使日に日経平均株価(清算価格となるSQ値)が20000円を下回っている(権利行使を行使しても金銭の受け取りがないアウト・オブ・ザ・マネー)と、20000円未満のものを20000円で購入する理由はないため権利放棄となり、購入額の全額が損失となる。

一方でオプションを売った売り方は、日経平均株価のSQ値が20000円を上回っていた場合には買い方の権利行使に応じて差額分を支払う義務を負うことになる。20000円を下回っていれば、買い方の権利放棄によりオプションの売却価格がそのまま売り方の利益となる。

仮に日経平均株価のSQ値が20500円だったとすると、20000円のコールオプションは

20500円の価値がある日経平均株価指数を20000円で買う権利

を意味するので、買い方が差金決済で受け取れる差額は20500-20000=500円となる。買い方がオプションを500円未満で購入していれば、その差額が利益として得られるわけである。

一方で差金決済で500円を支払う側となる売り方は、オプションの売値が500円未満だった場合は損失を被る。

日経平均株価のオプションの売買単位は1000倍なので、実際のオプション取引では上記の1000倍のやり取りが行われる。

オプション価格(プレミアム)

日経平均株価が20500円の時、日経平均株価20000円のコールオプションは現時点でイン・ザ・マネー状態であり権利行使すると500円を受け取れる。その意味において、500円の本質的価値を持っていると考えることができる。

ただし、日本市場で取引される日経平均株価のオプションは権利行使日にのみ権利を行使できるタイプのオプションであるため、実際にすぐ500円を受け取れるわけではない。権利行使日までに日経平均株価が値下がりしてオプションの価値が減少、さらには消滅する可能性もあれば、日経平均株価がさらに上昇してオプションの価値が上昇する可能性もある。

市場で取引されるオプションの価格(プレミアム)は、こうしたオプションが持っている本質的(潜在的)価値に加えて、権利行使日までの値動きに対する期待・警戒感によって構成される。特に、権利行使日までの期間が長いオプションは最終的な価値の予測が困難であるため現時点の潜在的な価値とは大きく乖離したプレミアムで取引される場面も多い。

潜在的な価値を持たないアウト・オブ・ザ・マネー状態のオプションに高いプレミアムが付いたり、イン・ザ・マネー状態であっても「市場参加者の予想値動き」に反するオプション(上昇期待が強い場面におけるプットオプションなど)は価格が暴落することもあり得る。

イン・ザ・マネー状態で残存期間の短いオプションは、価値の確度が高くなるため値動きも小さくなる。また、残存期間が短く現在価格からの乖離も大きなアウト・オブ・ザ・マネー状態のオプションはほぼ無価値であるが、市場状況によっては暴騰する可能性も秘めている。ボラティリティが高い局面においては、高リスク(購入金額の全額が損失となる可能性が高い)の投機対象として面白い存在かもしれない。

オプション取引のレバレッジ効果と投資戦術

オプション取引は、権利行使価格と原資産の「価格差」を実質的な取引対象とするため原資産の価格に対して高いレバレッジ効果を持っている。「特定の権利行使価格との価格差」の変動率は、原資産価格そのものに比べ遥かに大きくなるからである。

たとえば日経平均株価が20500円から21000円に上昇した場合、上昇幅は約2.5%であるが、日経平均株価指数20000円のコールオプションの本質的価値は500円から1000円と100%上昇する(ただし、取引価格も100%上昇するとは限らない)。原資産に対して40倍の上昇率となるわけである。

この高い資金効率を活かして、様々なオプションを組み合わせる投資戦術が研究されているほか、各種の「オプションプレミアム」戦術を取り入れた金融デリバティブ商品も人気となっている。

また、先物取引と同様に将来に向けた利益確定/損失限定のために使うこともできるため、保険としての活用法もある。